水深10㎝の海に潜む危険

長かった梅雨もようやく明け、いよいよ夏本番ですね。

良く行く近所の海水浴場も、夏らしく活気づいてきました。今回はそんな海水浴場でよく見かける危険生物、エイについてのお話です。

 

海の身近な危険生物といえば、クラゲやチンクイがポピュラーですが、刺された時の痛さで言うとこのエイは横綱クラス。そんなエイに刺されない予防法や、万が一刺された時の応急処置をご紹介します

 

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釣り上げられたアカエイ

アカエイの生態 ※1

日本で一番頻繁に見られるはエイは「アカエイ」という種類です。北海道南部から沖縄まで、日本全国の海に広く生息しています。おつまみの定番エイヒレにも用いられるエイですね。

 

大きいもので2mにもなるそうですが、良く見かけるのは1mくらいのものでしょうか。長く伸びた尾には小さなトゲが並び、尾の真ん中あたりから、尾棘と呼ばれる大きめのトゲが1本(時に2本)でています。この尾棘に毒があります。

 

浅い砂地の海を好み、普段は砂の中に体を隠して、顔と尾だけを出していることが多いようです。また餌を求めて川をさかのぼることもあり、川が海に合流する汽水域でもよく見られます。

 

なぜ危険?

つまり私達が気軽に遊ぶ砂地の海水浴場は、アカエイも好んで生息する場所なのです。子供たちが遊ぶ波打ち際、くるぶしくらいの浅瀬まで餌を探しに頻繁に寄ってきます。

 

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浅瀬を泳ぐアカエイ

浅瀬の砂の中に隠れているエイを、人間が踏んだり触ったりすると、尾を振りまわして毒のあるトゲで攻撃してきます。


トゲは非常に硬く、サンダルやウェットスーツはもちろん、空き缶くらいなら貫通する破壊力。さらにトゲには小さな刃のようなものがギザギザとついています。

 

 

こちらは実際に波打ち際でアカエイに刺された映像です。ヒラメだと思って遊んでいたらアカエイだったようですね。

この方は落ち着いて対応していますが、実際に刺されると中々こうはいきません。

 

まともに刺された場合、はじめに鉛筆で刺されたような痛みがあります。そして体内に入った毒が効き始めると、激痛に襲われます。個人差はあるでしょうが、この痛みは大人でもちょっとこれ我慢できるかな、というくらい強烈です。

 

適切な対処をしないと毒が全身へと回り、人によってはアナフィラキシーショックで血圧や脈拍の低下、呼吸障害、高熱、失神などを引き起こし、意識不明や時には死に至る危険性を含んでいるのです。

 

 

刺されないために

アカエイが自ら人間を刺しに寄ってくることはありません。刺されるのは、人間が踏みつけたり、不用意に触れてしまった時です。

 

ですので、砂のなかに隠れているエイに人間の存在を知らせて、逃げてもらうのが一番の予防法となります。遊んでいるとなかなか難しいですが、海の中ではすり足で歩く、釣り竿や網などがあれば進行方向の海底をつつきながら歩くなどして、なるべくエイに自分の存在を知らせるようにしましょう。

 

刺されてしまったらー応急処置ー ※2

まず傷の状態を確認

ブスッとまともに刺されたのか、それともトゲがかすった切り傷なのかなど、傷口の状態を確認してください。まともに刺されている場合は、病院の手配、場合によっては救急車を呼びましょう。病院へ向かう前、または救急車が到着するまでの間に以下の応急処置をしてあげてください。

 

●トゲを取り除く

まともに刺されたのであれ、かすった程度であれ、体内にトゲが残っている状態で時間が経過すると、傷口周辺の細胞が破壊され炎症を引き起こします。トゲは体内にある間、毒を出し続けます。

 

可能な限り、ピンセット等でトゲを取り除いてください。ひっかかったりして、逆に傷を広げてしまうような場合は、無理に触らず次の処置に移ってください。

 

●傷口をお湯で洗いながら、毒を絞り出す

 

アカエイの毒はタンパク質毒素と言われ、熱に弱い性質があります。やけどしない程度のできるだけ熱いお湯で傷口を洗い流しましょう。お湯がない場合は水でもいいのですが、お湯のほうが痛みをやわらげる効果があります。

 

●傷口をお湯につける

 

アカエイの毒は熱に弱いので、傷口をやけどしない程度のお湯につけておくと、痛みが軽減してきます。お湯がなければ、自販機でホット飲料を手に入れて患部に当てるなど、とにかく温めてあげてください。

 

逆に、冷やすと痛みが増すので注意が必要です。お湯につけて痛みがやわらいだとしても、のちに腫れやかゆみなどが出てきますので、お湯につけながら病院に行くことをお勧めします。

 

必ず医療機関へ

 

応急処置で痛みが引いても、必ず医療機関へ行きましょう。お湯につけておくとだいぶ痛みは軽減されますが、見逃したトゲが体内に少しでも残っていれば毒を出し続けることも考えられます。


対処法を間違えると治るまでに時間がかかります。また大きな傷跡になったりと、おおごとになりかねませんので、必ず医療機関を受診するようにしてください。


それでは皆様、海に山に楽しい夏をお過ごしください。

 

出典

1:吉野雄輔・2018年・山渓ハンディ図鑑「日本の海水魚」・山と渓谷社.

2:公益財団法人 日本中毒情報センター・保健師、薬剤師、看護師向け中毒情報 「魚刺傷」Ver.1.00