雪道の運転

子どもの頃、「雪が降る」と聞くと、楽しみで仕方がなかった。

夜になって降り出したのを確認すると、勝手に朝早く起きだして、まっさらな新雪に誰よりも先に自分の足跡をつけ、人型をつけ、ついでに立ちションをし、「かき氷レモン味~」などと騒いでいた。

 

いい加減大人になったので「レモン味~」はさすがにやらないのだが、やっぱり「雪」は冬の楽しみのひとつである。

 

今回は冬のアウトドアを楽しむためには必要不可欠な、雪道での運転についてである。

 

関東、特に首都圏はものすごく雪に弱い。5㎝足らずの積雪であっても、あっちでツルツル、こっちでガッシャーンとやっている。雪国の人からすれば「だせえ」と一蹴されるのだろうが、自分を含め、雪に慣れていないし、知識もないのだからしょうがない。

 

こちらは降っていなくても、行った先は降雪、積雪なんてことはよくあることだ。楽しいはずの道中が悲惨なものにならないよう、雪に対する準備をしておきましょう。

 

ノーマルタイヤでの雪道走行は交通違反

スノーボードやスキーを楽しむ方は、スタッドレスに履き替えているだろうが、あまり雪が降ることのない地域の方は、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを持っていない方も多いと思う。

 

しかし、ノーマルタイヤで積雪、凍結している道路を走行することは交通違反なのだ。

 

道路交通法では、運転者は “道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項”[1] を遵守しなければならないと規定している。その内容として各都道府県(沖縄県を除く)によって雪道での遵守事項が決まっているのだ。

 

各都道府県の規定を簡単に言えば、「雪道(積雪や凍結している道路)では、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなど、滑り止めの措置を講じましょう」というものだ。

雪道でのノーマルタイヤはダメ

出典:冬道日本自動車タイヤ協会

 

違反した場合、違反点数は0点だが、普通自動車で6000円、大型自動車で7000円の反則金が課せられる。

 

「反則金だけなら」と安易に考えるかもしれないが、雪道をノーマルタイヤで走行するという、道交法を違反した状態で事故を起こした場合、過失割合が著しく不利なものになることは確実だ。

 

積もるかどうかは別として、過去30年間の統計では東京都心でも一冬に平均10日くらい雪が降る。[2] 冬でもアウトドアを楽しもうという人は、必ずスタッドレスタイヤまたはタイヤチェーンを準備しておく必要がある。

 

雪道を運転する前の準備

 

まずは運転前に車に積んでおいてほしいもの、運転する前の準備について紹介しておこう。

 

車に積んでおくべきもの

雪道運転前の準備

 

手袋、帽子、長靴、防寒衣類

「チェーンの着脱」、「寒さでバッテリーが上がった」、「車体やガラスの雪を落とす」など雪が降っているさなかに、屋外でしなければいけない作業が出てくる可能性が高い。これらのあるなしで、同じ作業でも労力が大きく変わってくる。濡れても体温を奪われない素材のものを積んでおこう。

 

 

・ブランケット

防寒対策としてはもちろんのこと、雪で車がスタックしてしまった場合、タイヤの下に敷くことで抜け出すことも可能だ。ブランケットは冬に限らず、使い道の多い万能アイテムなので1つ載せておくといい。

 

 

・スクレーパー

寒冷地ではフロントガラスがすぐに凍る。その氷を取り除くために、スクレーパーがあると非常に便利だ。なければ、氷がとけるまで十数分は暖気が必要となる。車を止め、どこかに立寄るたびにフロントガラス待ちはしたくない。

 

 

・懐中電灯、ヘッドライト

身動きが取れなくなるのは昼だけじゃない。「夜になり、道が凍って動けなくなった」なんて最悪。ライトを持っていないと作業がはかどらずさらに最悪。先にも書いたが、雪道ではどうしても屋外でやらなければいけない作業が出てくる。夜間でも作業できるようライト類は必須。

 

 

・シャベル

人が少ないような場所へ行く場合、小さいものではなく、上部に足をかけて押し込めるタイプの大きめのシャベルがあるとよい。一晩で大量に雪が降り、車が埋もれて発進できないときや、スタックしてしまったときに威力を発揮する。

 

 

・ブースターケーブル

車のバッテリーは寒さに弱い。「スノーボードをして帰ろうと思ったら、バッテリーが上がってエンジンがかからない」なんてよくある話し。周囲に他の車があって、自分がケーブルを持っていれば一瞬で解決するのだが、これがないと寒い中、何時間もロードサービスを待つ羽目になる。冬の期間、JAFの出動件数の1/3以上はバッテリーが原因だ。[3] つまりだれにでも起こりうるということだ。

 

 

・停止板

おそらくどの車にも常備されていると思うのだが、必要な時にすぐ出せるだろうか?「スタックした」、「雪に隠れていた側溝にはまった」など、身動きが取れなくなったとき自分の存在を他車に知らせないと危険だ。今一度確認しておいてほしい。

 

 

・タイヤチェーン

最後になったが、雪深い所へ行くのであればチェーンも積んでおいたほうがいい。タイヤの性能にもよるがスタッドレスは万能ではない。

スタッドレスタイヤだけでは心もとないときは、さらにタイヤチェーンを履かせるといい。

 

 

他には、けん引ロープ、ジャッキ、替えのウィンドウォッシャー液、解氷スプレーなどがあると心強い。

 

運転前にしておくべきこと

・タイヤの交換、またはチェーンの装着

前述の通り、雪道をノーマルタイヤで走行することは交通違反です。

 

 

・ウィンドウォッシャー液の交換、補充

フロントガラスがクリアな状態でないまま運転するのは、非常に危険だ。「凍る」、「汚れる」、「曇る」、雪の日にはウィンドウォッシャーを頻繁に使う。また、ウィンドウォッシャー液自体もタンクや噴射ノズル内、噴射した途端にフロントガラスで凍ることがある。

 

遠出するのであれば、凍らない寒冷地用のウィンドウォッシャー液に変えた上で、補充用のものを持っておいたほうがいい

 

 

・ワイパー

ウィンドウォッシャーを頻繁に使うというのは、ワイパーを使うということだ。ワイパーのゴムが劣化していると、フロントガラスをきれいにできない。ウィンドウォッシャー液と一緒に確認しよう。

 

 

・エンジンオイル

 エンジンオイルは寒いと粘度が増し固くなる。雪が少ない地域の車が寒冷地に行った場合、寒さでオイルの流動性が失われ、エンジンがかかりにくくなる可能性が高い。するとエンジン始動のためにバッテリーを余計に消費し、バッテリー上がりの原因となるのだ。雪が少ない地域の方が寒冷地に向かうときは、冬用のエンジンオイルに変えておくのが望ましい。

 

 

・ディーゼル車は注意

最近、燃費のいいディーゼル車をどこのメーカーも作っているが、ディーゼルは凍るのだ。「凍る」は言い過ぎではあるのだが、エンジンオイル同様、流動性がなくなる。雪が少ない地域のスタンドは寒冷地規格のディーゼルではないため、現地のスタンド寒冷地規格になっている軽油を入れたほうがいい。

 

 

・車体に積もっている雪は落とす

たまに、雪が積もったままの車で街中を走っている人がいる。走行中に雪が落ち、もしも 後続がバイクだったとしら転んでしまう。車であっても滑るだろう。ブレーキやカーブで車上の雪が吹っ飛んで、通行人にあたったら?  運転前に車体の雪は落としましょう。

 

 

雪道での運転

 

急●●は禁物

雪道では、スピードも含めてすべての運転動作をゆっくりと行う必要がある。急が付く運転は避け、アクセル、ブレーキ、ハンドルの各操作をゆっくりと行ってほしい。

 

発進や加速ではタイヤが空転しないよう、ゆっくりとアクセルを踏み込む。カーブ手前では十分にスピードを落として、ゆっくりハンドル操作。ブレーキは数回に分け、タイヤが滑らないように、ゆっくりと踏み込む。

 

当然のことではあるのだが、ドライバーがこれらを守っただけでも、雪道での事故は大きく減るはずだ。

 

 

車間距離は通常の2倍以上

「雪道は滑りやすい」というのは周知の事実だが、どのくらい滑りやすいのだろうか?

 

通常の乾燥した道を基準にすると、“踏み固められた圧雪路で3.2倍、雪が凍った状態の凍結路では5.4倍、さらに氷が押し固められたツルツルのアイスバーン状態の凍結路では8倍”[4]もそれぞれ滑りやすいのだ。

 

つまり、雪道ではそれだけ車の制動距離がのびてしまうのだ。車間距離は通常よりも2倍以上は開けて、早めにブレーキをかけられるように、前の車だけでなく道路の先々の状況を把握するように努めてほしい。

 

 

エンジンブレーキを使う

たとえABSがついていても、フットブレーキだけではタイヤがロックし、車体が滑り出すことがある。タイヤをロックさせないためにはエンジンブレーキをかけ、先に車のスピードを落としてから、やさしくフットブレーキを使うのがいい。特に下り坂ではフットブレーキだけに頼らず、エンジンブレーキを使ってスピードを調整しよう。

 

 

カーブ中にブレーキをかけない

車のスリップ(横滑り)というのは、ハンドルを切りながらブレーキをかけているとき、オーバースピードでハンドルを切ったとき、ハンドルを切りながらアクセルを急激に開けたときに起こる。

 

たとえスリップしにくい四輪であっても、雪道では滑るのだ。

 

オーバースピードや急激なアクセル操作はしないにしても、「カーブ中のブレーキ」は普段からクセになっている可能性が高い。意識的にやめるようにしないとスリップの原因になる。

 

カーブに入る前に十分にスピードを落とし、ブレーキを使わずにゆっくりとカーブを曲がりきることを心がけてほしい。

 

 

坂道では止まらない

渋滞や信号待ちなどでどうしようもないこともあるが、雪の坂道ではなるべく止まらないほうがいい。なぜなら止まったままの状態でも車が滑り出す可能性があるからだ。

また、登り坂ではタイヤが空転して発進できないということも考えられる。

 

道路の先の状況や信号などをよく観察して、エンジンブレーキをうまく使いながらスピードを調整し、坂道ではなるべく止まらないようにしよう。

 

路面・道路を選ぶ

雪道の橋

 

同じ雪道でも、時間や場所によって路面は大きく変化する。風が吹き抜ける橋や日陰になっている道路では路面が凍り、アイスバーンになっていることが多い。またトンネル出口はトンネル内の乾燥した路面からまた雪道にもどるため、注意が必要だ。さらに多くの車が停止と発進を繰り返す交差点も、圧雪されて滑りやすくなっている。

 

つまり雪道では、どこに危険があるのかを理解したうえで、あなたが走る時間、走る場所によってスピードや運転の仕方を変えなければいけないということだ。

 

また普段なら幹線道路を避け、渋滞を回避しながら目的地に向かうと思うが、雪の日はなるべく幹線道路を使うほうが走りやすいはずだ。交通量が多いため轍ができているだろうし、雪かきがされている確率も高い。

 

時間にゆとりをもって、幹線道路を使って出かけよう。

 

 

信号が変わってもワンテンポ待って発進

交差点で青信号になったからと言って、すぐに発進するのは危険だ。反対の赤信号で止まりきれなかった車が滑って出てくるかも知れない。事故は自分が原因じゃなくても起こるのだ。もらい事故をしないように、信号が青でも周囲をよく観察してから発進しよう。

 

 

帰ってきたら下回りを洗車する

雪が降った場合、多くの道路で融雪剤が撒かれる。融雪剤というのは塩化カルシウムが主成分で、金属のサビを誘発するのだ。寒冷地仕様の車の下回りには、もとから防サビ塗料が吹き付けてあるのだが、雪が降らない地域で購入した車にはそのような対策がされていない。

 

 

一度でも融雪剤が撒かれた道路を走れば、必ず融雪剤が付着し、特に車の足回りや下回りにサビを引き起こしてしまう。

 

 

雪道の運転のあとには、車のボディ以上に足回りや下回りを洗車し、サビの発生を止めないと、のちのち大変なことになる。

 

 

通常のボディ洗車ではなく、車の底部が洗浄できる洗車機を使って、車体に付着した融雪剤を洗い流しておこう。